最期まで食事の希望がありました。

利用者様とのかかわり方

先日、ハートテラスにご入居されて7か月経過された方を施設で看取らせていただきました。ご入居前の入院先にて絶食となり、IVHという中心静脈カテーテルを挿入し、点滴にて栄養管理をされておられる方でした。義理堅いお方で、ご入居当初は遠慮があり言いたいことはおっしゃられず過ごされていましたが、徐々にスタッフとの間に信頼関係が築けると「食べたい」ということを口にされるようになりました。ご家族様、訪問診療医、看護師、介護士、ケアマネージャーで相談しながら、看護師見守りのもと、ほんの少しだけお楽しみゼリーを口にして頂くこととなりました。最初の一口目を摂取されたとき、本当にうれしそうな表情をされ「うまい!」とおっしゃられました。その後1,2か月はゼリーのみ一日1回から2回摂取されていましたが、むせこみが強いお方で、いつ誤嚥性肺炎を繰り返すかも分からないというなか、私たち看護師は毎日情報交換をしながら状態観察と吸引をこまめに行い、細心の注意を払っていました。そんな中、徐々に「おかゆはいつ食べれる? いつになってもおかゆが出てこん。おかゆが食べたい、梅干しが食べたい」とおっしゃられることが増え、時には感情をあらわにされることがあったり、時には悲観的な言葉を口にすることもあり、私たち看護師、介護士はどうすれば満足のいく生活を送っていただけるか、毎日話し合うようになりました。誤嚥性肺炎のリスクが高いため、食事はこの先も難しいと言い続けるのか、毎回否定することによりせっかく築くことのできた信頼関係が崩れてしまうのではないか、「死んでもいいから食べたい」とおっしゃられているのに私たちが止める目的は何か、毎回「ごめんね」と言わなければならない私たちも辛いが、それを聞かなければならないことのほうがもっと辛い、、スタッフ間でいろんなことを話し合いました。。。ご家族様にも何度かご相談させていただき、コロナ禍で面会できないことからテレビ電話でご自身の意思をはっきりとご家族様にも伝えられ、ご家族様からは「本人の意思を尊重したい」とのお話を頂き、おかゆをご持参いただきました。訪問医からも細心の注意を払うこととこまめな吸引の指示、異常時には速やかに報告するよう指示を受け、ご家族様が漬けたという梅干しとおかゆを毎日摂取していただくこととなりました。口数も増え、声もはつらつとして生き生きとした表情をされるようになり、スタッフ一同喜んでいたのもつかの間、日に日に痰がらみが強くなり、吸引すればおかゆがそのまま引けることも多く、1週間後には発熱がみられました。痰の性状も悪化し、抗生剤の点滴の指示がでました。もともとご入居された際に、体調の変化がみられた際はハートテラスでできる限りのことを実施し病院へは行かないとのご希望がご本人、ご家族様からあったため、私たちスタッフは各関係職種にも情報を伝えつつ再度ご家族様にも報告しハートテラスでお看取りの方向であることを再確認しました。その後、呼吸状態が悪くなり在宅酸素を使用しながら生活されるようになりました。発熱が治まれば、また「何か食べたい」とおっしゃられ、むせこみながらも食事をほんの少しとっていただく日々が続きました。吸引の回数が徐々に増え、発熱を繰り返していくうちに体力は少しずつ低下し、「食べたい」とおっしゃられることが少なくなりました。その後急速に全身状態が悪化し、それから2週間後に息を引き取りました。ご家族様からは「病院では食べられないと聞いていたけど、少しでも食べることができ、本人は満足だったと思います。本人の想いに応えてくれてありがとうございました。」とのお言葉を頂きました。私たちスタッフもその後、お看取りの振り返りをし、最期までその人らしく、その人のご希望に少しでも寄り添えたことがとても価値のあることだった、学ばせていただくことが多くあったなどの意見が出ました。ハートテラスは終身まで安心し、その方らしくお過ごしいただきたいとの思いでスタッフが日々ケアを提供しています。その方それぞれの想いに少しでも近づける様、これからも日々努力してまいります。